大阪の住吉社は古来堺と関係が深く、毎年旧暦六月晦日、住吉社から堺にある御旅所まで神輿が渡御し、夏越の祓えが行われてきた。これを住吉祭といい、現在では8月1日に神輿渡御が行われている。
本作はむかって左隻に住吉社、右隻に堺の町を配置する。左隻第1扇に渡御行列の先頭を行く猿田彦の姿が見え、第4・5扇に目を転じると住吉社の境内を四基の神輿が進んでいる。右隻では、商家の並んだ堺の町を、母衣武者や南蛮人などの仮装をした町衆が賑やかに練り歩く。本作は江戸時代初期の絵画様式で描かれているが、堺の町を描いた最古の絵画作品であり、中世の商都堺のおもかげをしのばせる貴重な資料である。